議会活動・活動報告バックナンバー

[2005年9月号]

ストップ「飽食死と餓死」

 人類の生存を脅かす深刻な問題として、核戦争と地球温暖化がある。しかし、この二つの人類の生存の危機に優るとも劣らぬ問題が現在大変な犠牲者を出しながら進行している。それは食料問題だ。より正確には、食料の配分の不均衡である。人類の第一の死亡原因は、戦争でも地球温暖化でもなく、栄養不足と栄養過剰だということである。

 今、日本やアメリカ、ヨーロッパなどの富める国の人々は、飽食して肥満になり、糖尿病や高脂血症、高血圧などの病気になり死期を早めている。アメリカの成人の6割は太りすぎで、14パーセントは超肥満といわれ、アメリカの子供も25パーセントが太りすぎといわれる。アメリカでは、太りすぎが死亡原因の2位との報告もある。私は、食べ過ぎて肥満化しさまざまな病気にかかり死亡することを、餓死に対して飽食死と呼ぶことにしたい。
 その一方で、アジア、アフリカなどでは、戦争、失政などの人災や自然災害により、8億4千万人もの人々が飢えに苦しみ、1年間に1,500万人、1分間に28人もの人々が亡くなっていると言われる。これほど大きな矛盾、不合理はあるだろうか。この地球で作られた穀物を、65億の人々が平等に分けたとすれば、すべての人が1日2,800カロリーの食事をとることができるにもかかわらずである。
 矛盾の最大の原因は、広い意味での飽食である。それには狭義の飽食すなわち食べ過ぎと食べ残しがある。食べ残しについては、残念なことに日本は世界で最も多いことを深く恥じなくてはならない。食品産業関係と家庭で合計2,125万トンの食品ゴミが捨てられているとのこと。これは、世界の年間食料援助量1千万トンの2倍を超える。
 明かに食べ過ぎている人は、「腹八分に医者要らず」の格言があるように、量を1割か2割減らしてほしい。また、食べ過ぎていない人も一口減らすことを心がけてもらいたい。僅か一口、1パーセント食事量を減らしただけでも、仮に国民全員が行えば128万人の餓死者を減らすことができる計算だ。
 日本政府は、地球温暖化防止に向け1990年比で二酸化炭素を6%削減を目標にしているが、現実には逆に8パーセント増えている。したがって目標を達成するためには、14パーセント削減しなくてはならないのだ。これに比べれば、食事の量を1パーセント減らすことは非現実的でもなく、如何に政府や自治体が真剣に国民に訴えるか、国民がそれにどれだけ協力するかにかかっている。
 食べる量を1パーセント減らせば、食べ過ぎが原因の病気は、その数倍は減ることが予測できる。そうすれば、国も自治体も個人も医療費の負担が軽くなる。そして、食費を年間80万円使っている家庭では、8千円がご褒美として手元に残ることになる。食べ物を少し余分に噛めば満腹感が得られるうえに、ますます健康になる。

 今、政府は、温暖化防止のために、電気や石油などのエネルギーの浪費をしないことを国民に強く求めている。ならば食べ物の浪費もしないことを強く求めるべきではないか。両者の根は一つだからだ。限りある資源やエネルギーを大切に使い人類が等しく欠乏から免れ、恒久にこの美しい豊かな地球に住み続けることができるようにすることが、人類共通の願いだからである。私たち地球市民も、ライフスタイルを変えていこうではありませんか。