議会活動・活動報告バックナンバー

[2006年8月号]

万引きを防止する環境を

 先日、都内のコンビニエンスストアが、万引きの被害などが原因で経営不振に陥り倒産したという報道を耳にしました。書店業界においては、「万引き倒産」という言葉もあるほど、万引きが社会経済に与える影響が大きいことは認識していましたが、コンビニエンスストアにまでその影響が及んでいることを知り、大変驚きました。
 県警の調べによれば、平成17年中の本県における万引き事件の認知件数は、約9千件で、前年とほぼ同数の横ばい状態であり、検挙された者は、成人が全体の約6割、少年が約4割だそうです。しかし、これはあくまでも警察が万引き事件を認知した件数、つまり、警察に届けられた数です。
 万引きの多くは、万引きした品物を本人が買い取ることなどにより、警察に届けられないまま店側で処理されるケースが多く、警察に届け出されるのは、被害金額が大きい場合や犯人が抵抗した場合などの悪質なケースであると聞きます。また、それ以上に、店側が万引きをされていても被害に気づかないケースが多く、これらの数を含めると、実際の行われている万引きは、かなりの数に上るのではないかと推察されます。
 平成17年4月、東京都青少年育成総合対策本部が都内に在学する中学生・高校生を対象に実施した「万引きに関する青少年意識調査結果」では、麻薬や脱法ドラッグを「絶対にやってはいけない」と考えている生徒が、全体の約94パーセントを占めていたのに比べ、万引きを「絶対にやってはいけないこと」と考えている者は全体の約76パーセントであり、また、約23パーセンントの者は、万引きをすることは「それほど大きな問題ではない」と回答しているとのことです。
 これらのことからも分かるとおり、万引きが後を絶たない背景には、万引きをした者を見つけても、商品を買い取ってもらうことで解決しようとする店の姿勢や、万引き自体を、他の犯罪に比べそれほど悪いことではないと考えている中学生・高校生らの規範意識の低さがあり、これらの要因を根本から取り除かない限り、万引きは決してなくなりません。
 窃盗罪に対する罰金刑の新設などを盛り込んだ改正刑法が本年5月28日から施行されていますが、今回の刑法改正も、従来、懲役刑の規定しかなかった窃盗罪に罰金刑を導入することにより、急増する万引き事件に歯止めをかけようという狙いがあるとのことです。
 しかし、罰金刑を導入するだけでは万引きをなくすことはできません。他人の物を盗む万引きがいかに卑劣な行為であるかを、幼児期から家庭内での躾や学校教育でしっかりと教え込んでいくことが必要です。
 そして、県内の各店舗においても、防犯カメラの設置や従業員に対する意識付けなどにより、万引きを行いにくい環境づくりに努めるとともに、万引き行為を発見した場合は警察や学校に連絡する旨の意思を明確にするなど、県下全域に「万引きは絶対に許さない」という県民意識を浸透させていくことが極めて重要と考えます。
 首都圏においても、既に東京都や横浜市では、自治体が中心となって官民一体による万引き防止のための協議会を立ち上げ、青少年に対する啓発活動と万引きの起こりにくい環境づくりの両面から、総合的な対策を推進していると伺っています。本県においても、県が中心となって万引き防止のための協議会を設立し、万引きを発生させない社会環境づくりを推進していくべきであると考えます。そして、それでも効果が上がらないときは、店側が万引きした者を捕まえたとき警察に連絡する努力義務を課した県条例を制定することも検討していく必要があると考えます。