議会活動・活動報告バックナンバー

[2008年3月号]

「脱夜ふかし社会」を

 脱サラ、脱産業社会、脱ダム等々、脱何々という言葉がたくさんあります。広辞苑によると、「脱」とは、抜け出すこと、逃れることとあります。そこで、言葉として適切であるかどうか、あるいは過去にすでに同様の言葉があったかどうか分かりませんが、私は「脱夜更かし社会」ということを提言したいと思います。その理由は大きく分けて三つあります。一つは子供の教育。二つは大人を含む県民の心身の健康のため。三つ目は地球温暖化対策のためです。

 子供たちが十分な睡眠と食事をとるなど、望ましい基本的生活習慣を確立することは、心身の健やかな成長にとって極めて大切であることは言うまでもありません。2年前の2月議会で早寝・早起き・朝ごはん運動について取り上げましたが、国や県、市町村も18年度から普及啓発活動を行った結果、朝食を摂る児童生徒が少しずつですが増えてきているようです。

しかし、早寝・早起きについては改善されているでしょうか。社会の24時間化で夜更かしが恒常化する中で、子供たちは太り、様々な生活習慣病にさいなまれ、キレやすく学力も低下していると言われます。子供たちに夜更かしが増えている原因は、コンビニやゲーム、携帯電話などがありますが、特に児童生徒への携帯電話の普及によってますます深夜の携帯電話利用が増えてきております。女子中学生の深夜の携帯電話利用が睡眠を乱す最大の原因だったという調査もあります。

 心身が成長する思春期に睡眠不足が広がるのは重大な問題で放置できません。子供には深夜に携帯電話を使わせない措置を取るべき段階にきていると訴える専門家もいるほどです。

 昨年10月、全国学力テストの都道府県別の正答率が公表されましたが、以外にも一位は秋田県でした。家族みんなが規則正しい生活を送っており、早寝・早起き・朝ごはん、それと学校で学んできたことを家で復習するのが今でも当たり前となっており、こうしたことが好成績につながったと言われています。アメリカでも、夜の就床時刻が遅く睡眠時間が少ない高校生ほど学業成績が悪いという報告があります。

 子供の夜更かしを改善するには大人の協力が不可欠です。にもかかわらず最近、コンビニや居酒屋、ファミリーレストランに幼児の姿を見かけることがしばしばあります。核家族化のため子供を一人で家に残しておけないという事情もあるのかもしれませんが、子供たちが健やかに眠ることのできる環境を奪っていることは確かす。

 夜更かしは、大人にとっても心身の健康に良くないことは明らかであり、糖代謝、脂質代謝、免疫機能等を低下させ、発ガン、肥満、老化を促進すると言われます。社会的損失にも大きなものがあります。2年前、日本大学医学部が発表した試算によると、睡眠不足から生じる経済損失は何と3兆5千億円、間接的なものを含めればこれをはるかに上回るともいわれます。夜の就床時刻が遅くなるほど、一日の合計睡眠時間が少なくなります。睡眠不足での車の運転・居眠り運転は、視界や判断力など、飲酒運転と同等との指摘もあり、追突事故の大半が睡眠不足に起因するともいわれます。睡眠時間を削って働いても効率的ではないということです。「眠気は気合いと根性で乗り切れ」という危険な社会通念が日本では蔓延していますが、居眠りは気合いで乗り切れるものではありません。意識改革が早急に必要です。

 今ようやく仕事と家庭生活の調和、ワーク・ライフ・バランスということが言われだしてきています。その重点課題が、過労死や過労自殺を生んでいる男性正社員の長すぎる労働時間を如何に縮めるかであると言われます。残業づけをやめさせ家庭生活との両立を行政としてもまた社会としても後押ししていく必要があります。これによって、社員の心身の健康が保たれるとともに、夫婦や親子とりわけ父と子の対話の時間も増え子供の人格形成にも大きくプラスするものと考えます。会社の安定した発展のためにも必要なことであることを経営者にも理解して頂く必要があります。

 早寝・早起きが照明や冷暖房等で省エネ、地球温暖化防止に役立つことは明らかです。夏場にサマータイムを導入すべきであるとの意見もあるほどです。

 日本フランチャイズチェーン協会によると、加盟するコンビニ約4万2千店のうち24時間営業は94%を占めるそうです。協会は夜間に店を閉めて16時間営業にしても、二酸化炭素の削減効果は3〜4%のとどまるとの試算結果を発表しています。しかし、年中無休24時間営業は外国ではあまりありません。それに、温暖化は言わば非常事態、16時間でも商売はできるとの意見もあります。24時間営業が、夜更かし社会をより一層助長していることも見逃せません。

 業界2位のコンビニチェーン・ローソンでは、24時間営業を見直すとの発言も社長から出始めています。営業の自由もあり条例等で規制はできませんが協力を働き掛けることは可能だと考えます。

 子供達も含め、ヒトは周期24時間の地球で生きる生物であることから逃れることはできないと言われます。子供たちの将来のためにも、大人たちの現在のためにも、そして地球の未来のためにも、今睡眠について真剣に考える時期にきていると思います。脱夜更かし社会の実現は、以上のほか犯罪を誘発する可能性が減少する等の効果も期待されます。百ます計算や早寝早起き朝ごはん運動を提唱した陰山英男立命館大学教授は、「日本人の睡眠時間を1時間増やせば日本の課題の多くは解決するのではなかろうか」とさえ述べています。したがって、これを県民いや国民運動として進めていくべきであると考えます。

 例えば、小学生ならば夜9時以降、中高校生ならば10時以降親は子供に携帯電話を使わせない。テレビやラジオは、ある一定の時間以降には子供向け番組を放送せず、子供に寝ることを促すテロップや呼びかけを流す。コンビニやレストランでは、夜の一定時間以降の来店した子供連れの親に、夜更かしの問題を解説したパンフレットをレジで無料配布してはどうか。目先の利益にとらわれず、地域社会の一員として共に子育てに協力して欲しいものだと考えます。