原発再稼働反対 自然エネルギーで経済成長

 

 

 3年前の原発事故はすでに、何十年も消えない傷痕を残している。地球温暖化や税財政問題でも、持続可能なモデルをつくれるかどうか岐路に立っている。  昨年、小泉純一郎元首相がフィンランドのオンカロ核廃棄物最終処分場を視察され、脱原発の意思が強まった。いまゼロとの方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しい。総理が決断すればできるとも発言しています。
  10月22日、東京のある会場で、「地域再生エネルギーシンポジウム」が開催され、小泉純一郎元総理の生の声を聞くことができました。私も3年前の大震災の直後、6月の県政報告で、原発にも、石油や石炭にも頼らない社会、最終的には液化天然ガスにも頼らない日本を築いていくべきであると書きましたが、元総理の事実に基づく熱のこもった話は、説得力があり、脱原発、原発ゼロ社会の実現の必要性を改めて強く感じました。
  小泉発言を要約すると、
 総理をしていた時は、原子力発電は安全で、コストが安く、クリーンなエネルギーであると考えていた。しかし、その考えは、3年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故がきっかけで大きく変わったとのことです。
 1979年に、アメリカのスリーマイル島で原発事故が起き、その後1986年にはソ連のチェルノブイリ原発でも大事故が発生しました。そして、今回福島第一原発の事故が起きたことで、約30年の間に3度の大規模な事故が発生している。原発が本当に安全なのかと思うようになり、色々と勉強したところ、「原発『安全』神話」が全く嘘であることがよくわかった。間違いに気づいたからこそ、今このように原発ゼロ社会の実現を目指しているとのことです。
 また、火力発電や水力発電等に比べて、原発の発電コストが安いと言われていますが、実はこれも間違い。本来、原発の発電コストには、安全対策や作業員の確保、最終処分場の確保等に伴う費用を含めて計算しなければなりませんが、これらの費用を含めると、他の電源に比べて発電コストが高くなってしまう理由から、電力会社はこれらを費用に含めないで計算している。このため、これらの費用を含めた、本当の原発発電コストは安いというのは全くの嘘であり、原発は「金喰い虫」の採算の取れない事業であるとのことです。
 それでも採算の取れない原発を電力会社が続けていけるのは、政府の介入があるから。政府の介入があるということは、言い換えれば、国民からの税金を使わなければ成り立つことのできない事業であるということです。今後、多額の税金を使わなければやっていけない原発を続けていくことには無理がある。未来にツケを残してしまう原発は、今すぐゼロにしなければならない。
 福島第一原発の事故以来、原発は危険であり、発電コストが高いということが世界中の常識になりつつあるにもかかわらず、日本の電力会社だけが、必死になって原発を再稼働させようと政府に働きかけている。
 日本では今後、福島第一原発事故の反省を活かして、原発の再稼働をさせるためには、世界で一番厳しい安全基準で審査を行い、その審査に合格しなければ稼働できないことになっています。しかし、本当に世界一厳しい安全基準が適用されているのかについても、住民の避難路の確保ひとつとってみても疑問がある。テロ対策に関しても同様で、具体的な基準ができておらず、不十分なのが現状であるとのこと。
 2013年9月に関西電力大飯原発2基が定期検査を受けるために停止し、日本にあるすべての原発の稼働が停止しました。それから1年以上たちますが、この間日本が電力不足でパニックになったことは一度もありません。日本は原発が無くてもやっていけることを証明した訳です。官民がお互いに協力して節電や新技術の開発等に取り組んできたからこそ、日本は、原発ゼロでやっていけることが証明できたのです。
 今後についても、原発ゼロに向けて官民が力を合わせて取り組むことによって、原発よりも安全で自然を大切にする太陽光、水力、地熱、風力等の自然エネルギーの技術開発が進むことが期待され、その結果、日本の経済成長を可能とするとのことでした。

 残念ながら11月7日、九州電力川内原発の再稼働が、事故に対する備えが不十分なまま決まった。また、放射性廃棄物の処分場をどうするかという問題もある。放射性廃棄物は低レベル代高レベルに分けられ、それぞれどう処理するかは大きな問題となっている。特に使用済み核燃料等の高レベル放射性廃棄物は、国が地下に埋めることを決めたが、候補地として挙がった自治体からはすべて反対された。最終処分場は、まだ一つも決まっていません。放射性廃棄物という別の形で子孫にツケを回す原発に期待をかけるのではなく、真に持続可能な社会への転換によって、二酸化炭素の大幅な削減を図るべきである。
 立地自治体がおしなべて再稼働に前向きなのは、過疎化が進み、原発を受け入れて交付金や税収を得ることでしか「まち」を維持できないからだと言われる。原発依存から脱していくことが必要なわけですが、原発はすべて地方にあり、しかも過疎と言われるような人口の少ない地域に立地している。ということは、一方は海に面しているとはいえ片側は森林におおわれているところが多い。今、日本の森林は、木材の安値と人手不足のために荒廃が進んでいる。他方、都会では不景気のために若者が就職しようと思っても、3人に1人が不本意な非正規採用となっている。そこで、森林という豊かな資源を着目して、林業に従事してもらい、原発を、火力発電所、それも石炭や、石油、天然ガスではない木材火力発電所にする。そうすれば、原発の廃炉作業と火力発電所としての仕事で、地域の雇用を維持できることになる。空き家や高齢化などの過疎対策にもなり、地方創生につながると考える。 

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