職員給与と議員報酬の増額反対
3月議会で議員報酬の増額には、民主党や共産党等も反対しましたが、職員給与の増額には、自民党から共産党まで全会派が賛成。両案に反対したのは、私だけでした。一瞬私は間違っているのかと思いましたが、政権交代直前の民主党は、公務員総人件費の2割削減を掲げていたはずですし、先の衆院選でも、維新の党も掲げていました。民主党も共産党も自治労の味方であって、県民の味方でないことが分かりました。
職員給与と議員報酬の増額反対討論
議案第55号、職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例の制定について、と議案第56号、特別職の職員等の給与、旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例の制定について、の反対の討論をさせていただきます。
一昨年は子供たちの実に6人に1人が貧困生活を余儀なくされているということで、大変胸を痛めたわけですが、昨年は、それどころか単身女性の3人に1人が、また母子家庭の2世帯に1世帯が貧困生活を余儀なくされているということが明らかとなっています。この豊かな日本においてですよ。政治の責任は極めて重いといわなければなりません。
他方、公務員はどうでしょうか。2年連続して給与・ボーナスが上がったことで、公務員天国の復活という声も出ています。本当にこれでよいのでしょうか。
人事院は、毎年一部の民間企業の給与実態を調べ、民間との格差が広がった場合には公務員給与を引き上げるように勧告をしていますが、国家公務員の給与に準ずる地方公務員も賃上げになることは必至とのこと。しかし、船橋市内のタクシー運転手や中小企業経営者などに伺っても、景気は船橋まで来ていないという声が圧倒的です。民間との格差を埋めるためというが、それは東京のしかも一部の大企業に限った話です。
「日本全体では、景気も良くなっていないうえに、今格差が広がっている。貧困問題も拡大している。そんな時に公務員の給料を上げようなんて、だれがどう考えてもおかしな話だ」と名古屋の河村たかし市長も発言しています。
昨年9月末、国税庁は、一昨年の民間企業の平均給与を415万と発表しました。そこで、県職員の26年度の平均給与はいくらか、予算委員会で質問したところ、なんと708万円とのこと。実に300万近い開きがある。正社員の平均は60万円ほど多いが、それでも、230万の開きがある。あまりにも官民格差がひどすぎます。そう思いませんか、皆さん。
その根本原因は、人事院そして人事委員会の調査対象となる民間企業は、企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の事業所が対象だからです。2006年4月 前は、企業規模100人以上かつ事業所規模50人以上の事業所が対象でしたしたが、それでは実態とあまりにもかけ離れているとして、企業規模50人以上に引き下げられました。しかし、日本全国には約550万の事業所がある中で、50人以上の事業所は3%にも満たず、むしろ、1~4人の事業所が全体の半数以上を占めているのが実情です。
しかも、正社員の給与だけで、契約社員など非正規労働者は対象外。非正規労働者は、この10年間で1割も増えて4割だというのに。つまり、民間企業の中でも例外である大企業に勤める正社員というまれなケースで計算していることになり、民間の実態を正しく反映しているとは到底言えません。
元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一さんも、「本来であれば、国税庁が調べている1人以上の事業所の給与実態のデータを基準に使うべきだ。直近の国税庁による調査結果を見ると、民間の平均給与は414万円。超優良企業ばかりを調べている人事院の調査だと、これが480万円に膨れ上がる。国税調査を基に計算すれば、公務員給与は、本来は15%ほど減額しなければいけないことになる」と言っています。
公務員給与が民間より少なければ勿論上げなければなりませんが、逆に公務員給与が民間を上回れば下げなければならないのも当然です。民間のように倒産やリストラもなく身分が保障されていうる上に、給与が高いのでは、公務員は優遇され過ぎと言わざるをえません。
職員の方々は、千葉県の発展と県民の幸せのために尽くしたいという思いで公務員になられたと思います。その県民の多くが、貧困と格差に苦しんでいるとしたら、県民の平均給与よりも多く受け取れないはずです。それが、公務員は全体の奉仕者と定めた憲法15条や、健康で文化的な生活を営む権利を定めた25条の精神ではないでしょうか。県の税収は、県民が額に汗して働いて納めた、いわば汗の結晶です。県民のためにこそ使い、市民県民に奉仕する立場の公務員が、県民から貪るようなことがあってはならないと考えます。
民主主義とは何か、と問われて、リンカーンのあの有名なゲティスバーグの演説の一節、「人民の、人民による、人民のための政治」を思い浮かべる方も多いことと思います。「人民のため」とは、人民の利益と幸福を図るということです。県政に当てはめるならば、県民の利益と幸福を図るということです。だのに、県民よりも自分達、議員や職員の利益を優先するとするならば、民主主義の本義にももとることになるのではないでしょうか。
国ならば国会議員と官僚、自治体ならば議会と執行部の、お手盛りと言われても仕方ありません。お手盛りとは、自分たちに都合の良いように物事を行うことを言います。私ども議員を含めて公務員のことを、古い言葉で公の僕と書いて公僕といいます。英語では、パブリックサーヴァント。市民県民にご奉仕するのが仕事です。皆さんには、県民の貧困にあえぐ声が聞こえませんか。公務員給与が高すぎるという声がありませんか。一部の富める者と公務員だけがぬくぬくと暮らす、そんな社会であって良い筈がありません。
高すぎる公務員給与と議員報酬を削減し、官民格差を是正して捻出される財源を福祉の充実や地域経済の活性化等に充てるべきと考えます。因って、私は両議案に反対致します。